
第35回記念 一般社団法人 工芸美術 日工会展
会期:2026年6月16日(火)~6月21日(日)
9:30AM~5:30PM(入場は5時まで)
最終日21日(水)は2:00PM終了
会場:東京都美術館 ロビー階 第4展示室
入場料:800円
主催:一般社団法人 工芸美術 日工会
後援:文化庁、東京都、日本経済新聞社
ミュージアムトーク:「工芸の今」
村田好謙 (漆芸)・谷口勇三 (陶芸)
6月20日(土) 11:00~
ワークショップ:「工芸タマゴ」工芸パーツで創る小さな世界
木谷陽子(漆芸)
6月20日(土) 1回目13:30~(定員15名)・ 2回目15:00~(定員15名)
場所・第3室後方
当日30分前から先着順に受付(その場に並ばれている方のみ)
第35回記念 日工会展 開催にあたって
我が国の工芸は、春夏秋冬が織りなす豊かな自然に育まれた日本人の感性によって、世界に誇る工芸美術として独自の発展を遂げてまいりました。
心、手、素材の交錯と融合の中から生まれる工芸…、激しく揺れ動く現代の消費社会にあって、ものをつくるという人間本然の行為に根ざす工芸の美は、私達の心のよりどころとして更に豊かな展開がもとめられています。
工芸美術日工会は、ものをつくる歓びを共有し、作家相互の自由意志を尊重し、価値ある造形を志す作家の集まりであります。現代の人の心に潤いを与え、より高く、時代を先駆ける創造を指向して、日本の文化発展にいささかでも寄与できればと願っています。
第35回展にも、充実した会員作品に加えて、一般公募作品の中に新鮮な感覚と未来を感じさせる意欲的な作品が多かったことも喜びとするところであります。
開催にあたり後援頂きました文化庁、東京都、日本経済新聞社をはじめ、ご協力、ご支援いただきました関係各機関に感謝の意を表します。
2026年6月
一般社団法人 工芸美術 日 工 会
主 旨
本会は作家の自由志向を尊重し、個性ある創作活動を通して、時代に即応した質の高い豊かな工芸を創造し、わが国の工芸美術の発展と文化の振興に寄与することを目的とする。
審査員
委嘱審査員
井谷善惠 (東京藝術大学特任教授) 外舘和子 (多摩美術大学教授)
| 荒木スミ子 (革) | 河野榮一 (陶) | 滝川幸志 (陶) |
| 池上猛 (陶) | 小林英夫 (陶) | 谷口勇三 (陶) |
| 井上絵美子 (漆) | 小割哲也 (陶) | 橋詰里織 (漆) |
| 岩渕浩之 (漆) | SUIT (漆) | 広沢麗子 (織) |
| ◎加藤令吉 (陶) | 高名秀人光 (漆) | 村田好謙 (漆) |
(五十音順)
審査員講評
第35回の委託審査委員として審査させていただきました。入選・ 入賞された方々に心からお祝いを申し上げます。
明治から昭和を生きた批評家であり、日本藝術院会員でもあった長谷川如是閑が、昭和21年発行の『美術及工藝』(第一巻第一号)の巻頭に「工藝に於ける封建的性格」とする論考を寄せていて、その中で、「その個性的創造の閃きがなくては、現代工藝としては意味はないといってもよい」、「現代生活の美と善とから自然に生まれる工藝品は、決して類型的であったり、かたくななものであったりするはずはない」と記しています。
2026年の日工会審査で思い浮かんだのが、まさに如是閑がいった「個性的創造」の集約であり、類型的なものやかたくななものを排除した作品がここにあるということでした。
例えば内閣総理大臣賞を受賞した「Tales」は、審査当初の段階から突出して目立つ作品ではなかったのですが、なんどか審査を重ねるにつれて、「面白い!」と思わせる個性が光ってきました。乾漆のリングに穿たれた穴に夫々個性があり、創造力の賜物に思えました。
また、本年度は、特に染織の分野に見ている者の心を明るくさせるような鮮やかな作品が多かったのですが、その配色が類型的ではなく個性にあふれていました。陶芸作品も、形が柔軟で作り手がどのように土を捏ねていたのだろうかとワクワクさせる、かたくなさとは対極のしなやかさが作品から溢れていました。残念ながら大きな賞を逃したものの、ガラスや紙の作品にもそれらが見られました。
漆の作品にも類型的ではない闊達さが感じられました。昨今、漆の分野では乾漆が多く、一見、自由そうに思える乾漆も、世に出る作品が増えるにつれ、残念ながら類型的で既視感が出てきます。それを排除し、創造的な作品を作ることを可能にするのは日々培われた技術です。それは漆に限ったことではなく、例えば陶芸の分野においても、創造力に満ちた作品を作る陶芸家は、一方で茶道の約束事にのっとった手抜かりのない茶碗を作ります。乾漆を中心とする漆芸家においても筥を作るとゆがみのない作品を作り、木工芸家も同様です。
如是閑はまた、「封建時代には心までが統制されていたが今はそういう時代ではない」と記しています。心の統制のない現代だからこそ、藝術の世界では縛られないものを作るのが到って難しいかもしれません。今年も日工会展会場において、「個性的創造の閃き」に溢れた、類型的ではない作品に会えるのを楽しみにしています。
東京藝術大学特任教授 井谷善惠
審査員講評
今年も、活気に満ちた空気の中で委嘱審査員を務めさせて頂きました。
審査は、例年に倣い、まずは一般の公募作品、続いて会員らの作品の受賞作を選考するという段取りで進めていきました。
審査会場には、紙を素材としたボリューム感ある造形作品や、従来にないタイプの漆芸作品、変化に富んだキルトや皮工芸の大作など、他の展覧会では余り見られないような作品もあり、心躍る思いで審査にあたりました。多岐にわたる作品の数々は、日工会展の内容の幅広さを示しています。欲を言えば、ガラス、木、竹の工芸などの出品が増えると、さらに多様性が増すことでしょう。
受賞者は、九州・ 鹿児島県や東北・ 福島県など、幅広い地域から選ばれており、日工会展が全国から注目されていることが分かります。
以下、上位の受賞作を中心に触れていきましょう。
会員対象の最高賞である内閣総理大臣賞はSUITさんの《Tales》で、透かし模様の施された大きな円環がたおやかに自立する新鮮な漆芸作品でした。また、文部科学大臣賞を受賞した市場勇太さんの染色作品《遷移》は、型染の線を活かしつつも暈しを利かせるユニークな手法と同時に、極めて印象的な色彩感を放っています。さらに今回、漆芸は特に優品が目立ち、東京都知事賞の橋詰里織さんの乾漆《ほどける》も、軽やかで動きのある形態感と丁寧な仕上げで魅せました。
会員の方々の作品は特に、技術レベルやまとめ方など、やはり一定の水準以上のものがそろう傾向があり、工芸表現として危なげのない安定感があります。ただし一方で、各々がこれまでの自分自身を超えていく挑戦意識も大切にして欲しいと思います。
一般公募作品の最高賞である日工会大賞は、吉田里香さんの陶芸作品《Dive》で、シャープな形と繊細な線文様の組み合わせが、陶による力強さや勢いを感じさせました。また、第35回の記念賞は、河村尚江さんの染色作品《彩雲》が受賞し、その華やかでダイナミックな空間性が、友禅の可能性を拡げていくように思われます。
審査の現場は、限られたスペースで、立体は床置き、平面も概ね床の上で壁に立てかけられた状況で行われます。そのような、作品を視る上では厳しい審査環境においても、確かな表現力を主張することのできた作品は、実際の展覧会の会場で、さらなる輝きを放つことでしょう。
受賞作、入選作のいずれも、美術館の展示空間という晴れ舞台で、多くの来場者が存分に楽しみ、感動を味わえるものと思われます。
多摩美術大学教授 外舘和子
第35回記念 工芸美術 日工会展 受賞者
| 会員 | 賞名 | 題名 | 種目 | 立・平 | 名前 | 県名 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 内閣総理大臣賞 | Tales | 漆 | 平 | SUIT | 京都 | |
| 文部科学大臣賞 | 遷移 | 染 | 平 | 市場 勇太 | 静岡 | |
| 東京都知事賞 | ほどける | 漆 | 立 | 橋詰 里織 | 滋賀 | |
| 日工会会員大賞 | CUBE GATE | 陶 | 立 | 金井 伸弥 | 千葉 | |
| 記念賞 | 宵待ノ風 | 磁 | 立 | 細川 令子 | 岐阜 | |
| 日工会会員賞 | 干潟の喧騒 | 染 | 平 | 三反田 登美子 | 鹿児島 | |
| 日工会会員賞 | 煌めく | 漆 | 平 | 岩渕 浩之 | 福島 | |
| 日工会会員賞 | 風を紡ぐ | 陶 | 立 | 鈴木 信子 | 愛知 | |
| 日工会会員賞 | 刻の風景 | 染 | 平 | 金井 大輔 | 滋賀 | |
| 日工会会員賞 | 流天 | 陶 | 平 | 四宮 未紗子 | 千葉 | |
| 日工会会員賞 | 若葉の季節へ | 織 | 平 | 広沢 麗子 | 神奈川 | |
| 一般 | 賞名 | 題名 | 種目 | 立・平 | 名前 | 県名 |
| 日工会大賞 | Dive | 陶 | 立 | 吉田 里香 | 京都 | |
| 記念賞 | 彩雲 | 染 | 平 | 河村 尚江 | 岐阜 | |
| 日工会賞 | 孤高 | 陶 | 立 | 牧野 収 | 富山 | |
| 日工会賞 | 望郷 | 紙 | 立 | 寅 ヲ | 福岡 | |
| 日工会賞 | 消滅から誕生へ | 漆 | 立 | 大石 晃 | 静岡 | |
| 日工会賞 | 共生 | キルト | 平 | 石﨑 圭子 | 静岡 | |
| 日工会賞 | 未完のかたち-陶の兆し | 陶 | 立 | 池本 浩之 | 愛知 | |
| 日工会奨励賞 | 感情の表出 | 陶 | 立 | 関 信夫 | 千葉 | |
| 日工会奨励賞 | Stairway to … | 陶 | 立 | 大和 宏 | 山口 | |
| 日工会奨励賞 | 静包 | 鍛 | 立 | 椛澤 伸治 | 新潟 | |
| 日工会奨励賞 | 夕日に映えるバオバブの木 | 織 | 平 | 大友 紀子 | 栃木 | |
| 日工会奨励賞 | 交錯の狭間で | 漆 | 立 | 星 温美 | 栃木 | |
| 日工会奨励賞 | 時の繋留 | 漆 | 平 | 貫名 渚 | 京都 |
新入選者
「未完のかたち-陶の兆し」池本浩之|陶/愛知県
「流星」石澤まり子|陶/千葉県
「青のカオス」イシヤマヒロコ|染・ ハンドフェルト/新潟県
「彩雲」河村尚江|染色/岐阜県
「〇 △ □」金基煥|染色/京都府
「「千字文」漆飾箱」呉雯雯|漆芸/京都府
「Polyhedron-Rise-」田尾晃|陶/滋賀県
「清風動脩竹」中山一郎|漆芸/栃木県
「時の繋留」貫名渚|漆芸/京都府
「Io’s Garden Party」野口結貴|染色/大阪府
「Form」 PANG YAWEN|硝子/東京都
「夢」三宅康子|織/神奈川県
「モス・トルネード」武藤常男|陶/新潟県
「結晶・ 細胞膜」陸楠|硝子/東京都
「宇宙の光線」 涌井みゆき|ワイヤー/新潟県
「Uncanny Soldiers」 渡辺優奈|陶/愛知県