工芸美術 日工会
第31回 工芸美術 日工会展

第31回 工芸美術 日工会展

第31回 工芸美術 日工会展

会期:令和4年6月15日(水)~21日(火)
   9:30AM~5:30PM(入場は5時まで)
   最終日21日(火)は2:00PM終了
   休館日:20日(月)
会場:東京都美術館 ロビー階 第4展示室
主催:一般社団法人工芸美術日工会
後援:文化庁、東京都、日本経済新聞社

主  旨

本会は作家の自由志向を尊重し、個性ある創作活動を通して、時代に即応した質の高い豊かな工芸を創造し、わが国の工芸美術の発展と文化の振興に寄与することを目的とする。

第31回日工会展開催にあたって

 我が国の工芸は、春夏秋冬が織りなす豊かな自然に育まれた日本人の感性によって、世界に誇る工芸美術として独自の発展を遂げてまいりました。
 心、手、素材の交錯と融合の中から生まれる工芸…、激しく揺れ動く現代の消費社会にあって、ものをつくるという人間本然の行為に根ざす工芸の美は、私達の心のよりどころとして更に豊かな展開がもとめられています。
 工芸美術日工会は、ものをつくる歓びを共有し、作家相互の自由意志を尊重し、価値ある造形を志す作家の集まりであります。現代の人の心に潤いを与え、より高く、時代を先駆ける創造を指向して、日本の文化発展にいささかでも寄与できればと願っています。
 第31回展にも、充実した会員作品に加えて、一般公募作品の中に新鮮な感覚と未来を感じさせる意欲的な作品が多かったことも喜びとするところであります。
 開催にあたり後援頂きました文化庁、東京都、日本経済新聞社をはじめ、ご協力、ご支援いただきました関係各機関に感謝の意を表します。

2022年6月

一般社団法人 工芸美術 日 工 会

審査員

委嘱審査員
米田耕司 (美術評論家)、 古川爲之 (古川美術館館長)、 林奈美恵 (古川美術館学芸員)

石橋美代子 (七)、 市場勇太 (染)、 加藤令吉 (陶)
河野榮一 (陶)、 郡和子 (硝)、 小林英夫 (陶)
志観寺範從 (漆)、 鈴木葉子 (染)、 辻博美 (七)
德力竜生 (硝)、 冨岡大資 (陶)、 野村拓功 (陶)
羽鳥律子 (陶)、 広沢麗子 (織)、 福富信 (陶)
伯耆正一 (陶)、 村田好謙 (漆)、 吉江夕音 (刺)
(五十音順)

受賞者

内閣総理大臣賞祥惶富山県 志観寺範從(漆)
文部科学大臣賞昇光京都府小林英夫(陶)
東京都知事賞森の譜より「耐えて」福島県坂内憲勝(漆)
日工会会員大賞記憶の風景滋賀県金井大輔(染)
日工会大賞搖らぐ大阪府昼馬和代(陶)
日工会会員賞流星富山県池上猛(陶)
日工会会員賞新潟県羽鳥律子(陶)
日工会会員賞江戸沖浪裏東京都市川富美子(陶)
日工会会員賞山峡盛夏神奈川広沢麗子(織)
日工会会員賞海遊富山県吉江夕音(刺)
日工会賞未生東京都大場千恵(硝)
日工会賞Silhouette富山県志観寺愛(漆)
日工会賞亜空間栃木県平山洋子(織)
日工会賞静岡県藤中知幸(漆)
日工会賞カフカ山口県大和宏(陶)
日工会奨励賞積陽栃木県梅本聖夫(七)
日工会奨励賞煌めく愛知県川口広美(革)
日工会奨励賞静聴新潟県椛澤伸治(鍛)
日工会奨励賞表象滋賀県北浦雄大(漆)
日工会奨励賞PEACE香川県河野竹克(染)
日工会奨励賞オニキス愛知県辻口諒路(陶)
日工会奨励賞The Vanishing (滅びゆくもの)静岡県寺田朝子(陶)

審査講評

 長引く新型コロナウイルス感染症の流行が未だ収束せず、現在も猛威を振るっています。国民全体の社会活動も制約され、文化芸術の面でも閉塞された傾向にあります。そんな困難な状況にもかかわらず、工芸美術家の皆さまが、例年に劣らない素晴らしい作品を寄せられて活気ある創作の熱意を示して下さり、感動し、勇気づけられています。
 入選・入賞作品は技術的に優れていることは言うまでもなく、個性的で造形性豊かな作品が多く、美的水準の高さを感じました。
 今回2度目の審査に当たっても、前回同様に次の3点を基本にしました。
  1、個性的であるかどうか。すぐ見たらだれの作品かわかること。
  2、時代を先取りするような新しさがあるかどうか。
  3、永遠であるような、時間が過ぎても古くならないみずみずしい作品であるかどうか。
 入賞作品は技術的にも優れ、具体的でありながら幻想的な作品や広がりのある世界を表現した作品が多く見られました。全体的に技術の高さと同時に、モチーフが現代的で表現も新しく、繊細かつ刺激的な作品など、愛おしくなる作品が見られたことも印象に残りました。
 作品には、作家の創意や構想を表現する技術に裏打ちされて、作品に「いのち」が注がれます。造形に感動が込められています。
 「造形(かたち)作品」には、技術の上に作品の背後から立ち上る美への昇華があり、感動します。「かたち」は「かた+ち」のことで、「かた」とは「型」です。つまり鋳物の型のように同じ形を繰り返し生み出すものです。「ち」は「血・霊」で、「いのち」で「巡るもの」です。「命(いのち)」の語源は「息の内」とも「生きている血」だとも言われています。息の繋がったものが「生(む)す」で、「むすこ(息子)」「むすめ(息女)」です。「皮膚」は英語でスキン(skin)ですが、漢語で「皮」は生物学・医学的で、物質的な意味合いがあり外面的です。和語では「皮と肌」ですが、ニュアンスに違いがあります。例えば「欲の皮・鉄面皮」と「肌合い・学者肌」など、和語の「肌」は人間的・文化的で魂・霊的意味合いがあり内面的です。「かたち・形」は「型+霊」です。個を超えて連続する伝統的な流れです。型に作者の「ち(血・霊)」が入って、作品は生命(いのち)あるものとして鑑賞者の眼から心に届くものだと思っています。
 どうか、温かい「いのち」の巡る工芸美術の創出に勇往邁進されますよう、期待します。

美術評論家 米田耕司

 今回も昨年に引き続き第31回日工会展の委嘱審査員となり、審査をさせていただきました。審査方法は昨年と同様、全審査員による公開投票で行われ、会員大賞、日工会大賞、会員賞、日工会賞、奨励賞の授賞作を選出しました。
 理事、会員による作品は、自身のテーマを深く追求し、さらに発展させたものが多く作家の挑戦の跡を見ることができました。一般公募の作は、日工会らしい現代的な視点による造形性豊かな作品が昨年より多くあり、今後の展開に期待したいです。
 その中、文部科学大臣賞を受賞した小林英夫の『昇光』は正面からとらえると円柱形を成していますが側面から臨むと中央が隆起し、さらに背面はフラットな構造を持っており多角的な視点が楽しめる作品でした。ボディを装飾する細かなレリーフは表面には直線を基調とし、中央はうねりを、そして背面はエネルギーが弾けるような文様がみられ、一定の秩序に基づき配されたそれらは、作者がテーマとしている「森羅万象」を表現していました。極小なものが集まりそこに秩序が生まれ、大きな形へと変化し、その美しい流れを持った大きなかたちは力強く見るものを魅了する、作者の想いが昇華していました。日工会会員大賞を授賞した金井大輔の『記憶の風景』は潔いまでの白地に鮮やかな青空と線による装飾が施された作者の記憶の風景が染め上げられていました。ノスタルジックな情緒に傾きがちになる紙飛行機のモチーフが洗練されて見えるのは、非常に優れた色彩感覚と構成力によるものでしょう。テーマとなっている記憶は、哀愁、郷愁といった言葉を思い起こさせついつい民俗的な表現を連想しますが、本作はむしろ現代的であり、都会的であか抜けた印象を持ちました。また、形体も単調な平面ではなく、中央部分を若干浮かせ、二重構造にすることで奥行きが生まれ、平面的になる染色の欠点を補っていました。この優れたデザイン力は今後の彼の表現の要となっていくことでしょう。
 工芸で使用する素材にはそれぞれの長所、短所があります。作家たちはその素材を駆使しながら長所を最大限に生かし、実験、検証、失敗を繰り返す中で素材の限界に挑戦します。そしてその素材だからこそ生まれる美、表現にたどり着きます。その工芸の魅力に制作への喜び、時代を反映した現代的な今を生きる作家たちの観点が加わり会の特徴となっている日工会のさらなる発展を期待しています。

古川美術館 館長 古川爲之

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